あなたが「ネトウヨ」でもない限り、彼らをひどく憤らせた日系アメリカ人YouTuberのミキ・デザキを、おそらくご存知ないだろう。ネトウヨからの度重なる脅迫にも臆せず、彼らの主張にむしろ好奇心を掻き立てられたデザキは、日本人の多くが「もう蒸し返して欲しくない」と感じている慰安婦問題の渦中に自ら飛び込んでいった。
慰安婦たちは「性奴隷」だったのか?「強制連行」は本当にあったのか? なぜ元慰安婦たちの証言はブレるのか? そして、日本政府の謝罪と法的責任とは……?
次々と浮上する疑問を胸にデザキは、櫻井よしこ(ジャーナリスト)、ケント・ギルバート(弁護士/タレント)、渡辺美奈(「女たちの戦争と平和資料館」事務局長)、吉見義明(歴史学者)など、日・米・韓のこの論争の中心人物たちを訪ね回った。さらに、おびただしい量のニュース映像と記事の検証と分析を織り込み、イデオロギー的にも対立する主張の数々を小気味よく反証させ合いながら、精緻かつスタイリッシュに一本のドキュメンタリーに凝縮していく。そうして完成したのが、映画監督ミキ・デザキのこの驚くべきデビュー作、『主戦場』だ。
映画はこれまで信じられてきたいくつかの「物語」にメスを入れ、いまだ燻り続ける論争の裏に隠された“あるカラクリ”を明らかにしていくのだが——それは、本作が必見である理由のごくごく一部に過ぎない。
さて、主戦場へようこそ。
※映画登場順
ドキュメンタリー映像作家、YouTuber。1983年、アメリカ・フロリダ州生まれの日系アメリカ人2世。ミネソタ大学ツイン・シティーズ校で医大予科生として生理学専攻で学位を取得後、2007年にJETプログラムのALT(外国人英語等教育補助員)として来日し、山梨県と沖縄県の中高等学校で5年間、教鞭を執る。同時にYouTuber「Medama Sensei」として、コメディビデオや日本、アメリカの差別問題をテーマに映像作品を数多く制作、公開。タイで仏教僧となるための修行の後、2015年に再来日。上智大学大学院グローバル・スタディーズ研究科修士課程を2018年に修了。初映画監督作品である本作『主戦場』は、釜山国際映画祭2018ドキュメンタリー・コンペティション部門の正式招待を受ける。韓国では劇場公開も行われ、ハーバード大学、スタンフォード大学など世界50以上の大学や学会で上映され学術的にも高く評価された。
地域 | 劇場名 | 電話番号 | 公開日 |
東京都 | シネマハウス大塚 | 03-5972-4130 | <Mシネマ第29弾 "政治と生活" 映画特集上映>にて 2023年5月20日(土)~5月26日(金) *23日休映 |
東京都 | シアター・イメージフォーラム | 03-5766-0114 | <上映終了> <2022年 アンコール上映 さらに延長決定!!> 2022年4月9日(土)〜5月13日(金)まで!! |
東京都 | アップリンク吉祥寺 | 0422-66-5042 | <上映終了> ●見逃した映画特集2019にて上映 2020年1月10日(金)〜1月16日(木) |
東京都 | ポレポレ東中野 | 03-3371-0088 | <上映終了> 9月7日(土)〜10月11日(金) |
東京都 | 新文芸坐 | 03-3971-9422 | <上映終了> 10月6日(日)〜10月10日(木) |
東京都 | シネマ・チュプキ・タバタ | 03-6240-8480 | <上映終了> ●上映延長決定!! 11/1(金)、11/2(土)、11/3(日)、 11/6(水)、11/13(水) |
東京都 | 下高井戸シネマ | 03-3328-1008 | <上映終了> 11月30日(土)〜12月6日(金) |
東京都 | ユジク阿佐ヶ谷 | 03-5327-3725 | <上映終了> 12月14日(土)〜12月27日(金) |
東京都 | キネカ大森 | 03-3762-6000 | <上映終了> 2020年7月10日(金)~7月16日(木) |
神奈川県 | 横浜 シネマ・ジャック&ベティ | 045-243-9800 | <上映終了> ●追加上映決定!! 6月15日(土)〜6月28日(金) 7月6日(土)〜7月26日(金) |
神奈川県 | 横浜シネマリン | 045-341-3180 | <上映終了> 8月3日(土)〜8月30日(金) ※8/12(月)休映 |
神奈川県 | あつぎのえいがかん kiki | 046-240-0600 | ●アンコール上映決定!! 2020年5月2日(土)〜5月9日(金) |
神奈川県 | CINEMA AMIGO | 046-873-5643 | <上映終了> 7月22日(月)〜8月17日(土) |
神奈川県 | シネコヤ | 0466-33-5393 | <上映終了> 2019年12月30日(月)〜2020年1月19日(日) |
群馬県 | シネマテークたかさき | 027-325-1744 | <上映終了> 7月20日(土)〜8月2日(金) |
群馬県 | 前橋シネマハウス | 027-212-9127 | <上映終了> 11月16日(土)〜11月29日(金) |
栃木県 | 宇都宮ヒカリ座 | 028-633-4445 | <上映終了> 8月10日(土)〜8月23日(金) |
栃木県 | フォーラム那須塩原 | 0287-60-7227 | <上映終了> 11月8日(金)〜11月14日(木) |
茨城県 | あまや座 | 029-212-7531 | <上映終了> 8月17日(土)〜8月30日(金) |
埼玉県 | 川越スカラ座 | 049-223-0733 | <上映終了> ●アンコール上映決定!! 10月5日(土)〜10月11日(金) |
千葉県 | キネマ旬報シアター柏 | 04-7141-7238 | <上映終了> ●上映延長決定!! 6月15日(土)〜7月19日(金) |
北海道 | シアターキノ | 011-231-9355 | <上映終了> ●上映延長決定!! 6月8日(土)〜7月12日(金) |
北海道 | 苫小牧 シネマ・トーラス | 0144-37-8182 | <上映終了> ●上映延長決定!! 6月22日(土)〜7月19日(金) |
北海道 | 函館 シネマアイリス | 0138-31-6761 | <上映終了> ●上映延長決定!! 7月27日(土)〜8月16日(金) |
北海道 | おびひろ自主上映の会 | 0155-66-5015 | <上映終了> ●アンコール上映決定!! 8月3日(土)のみ 会場:とかちプラザ 視聴覚室 |
北海道 | 浦河 大黒座 | 0146-22-2149 | <上映終了> 9月8日(日)〜10月5日(土) |
青森県 | フォーラム八戸 | 0178-38-0035 | <上映終了> ●上映延長決定!! 6月7日(金)〜6月20日(木) |
岩手県 | フォーラム盛岡 | 019-622-4770 | <上映終了> 8月16日(金)〜8月22日(木) |
山形県 | フォーラム山形 | 023-632-3220 | <上映終了> ●上映延長決定!! 7月5日(金)〜7月18日(木) |
宮城県 | チネ・ラヴィータ | 022-299-5555 | <上映終了> ●上映延長決定!! 5月17日(金)〜7月4日(木) |
福島県 | フォーラム福島 | 024-533-1717 | <上映終了> 6月14日(金)〜6月20日(木) |
福島県 | まちポレいわき | 0246-22-3394 | <上映終了> 2020年1月10日(金)〜1月23日(木) |
新潟県 | シネ・ウインド | 025-243-5530 | <上映終了> 5月18日(土)〜6月14日(金) |
新潟県 | 高田世界館 | 025-520-7442 | <上映終了> 5月11日(土)〜5月31日(金) |
富山県 | HOTORI×ほとり座 | 076-422-0821 | <上映終了> 6月1日(土)〜6月14日(金) |
石川県 | シネモンド | 076-220-5007 | <上映終了> 6月22日(土)〜7月5日(金) |
愛知県 | 名古屋シネマテーク | 052-733-3959 | <上映終了> <2022年 アンコール上映決定!!> 2022年4月23日(土)〜4月29日(金) |
静岡県 | 浜松 シネマイーラ | 053-489-5539 | <上映終了> 7月20日(土)〜7月26日(金) |
長野県 | 松本CINEMAセレクト | 0263-98-4928 | <上映終了> ・5月12日(日) 11:00〜 会場:松本市中央公民館 Mウイング6階ホ-ル ・5月26日(日) 11:00〜 会場:まつもと市民芸術館小ホール |
長野県 | 長野ロキシー | 026-232-3016 | <上映終了> ●上映延長決定!! 7月13日(土)〜8月2日(金) |
長野県 | 上田映劇 *トラゥム・ライゼ(旧上田でんき館)にて上映 |
0268-22-0269 | <上映終了> <2022年 アンコール上映決定!!> 2022年4月23日(土)〜4月29日(金) *4/25㊊休館 |
大阪府 | 第七藝術劇場 | 06-6302-2073 | <上映終了> <2022年 アンコール上映決定!!> 2022年4月9日(土)〜4月22日(金) |
大阪府 | シアターセブン | 06-4862-7733 | ●ロングラン公開中!! 3月以降も上映予定 |
京都府 | 京都シネマ | 075-353-4723 | <上映終了> ●再アンコール上映決定!! 8月24日(土)〜9月6日(金) |
京都府 | 京都みなみ会館 | 075-661-3993 | <上映終了> 11月29日(金)〜12月12日(木) |
京都府 | アップリンク京都 | 075-600-7890 | <上映終了> 2020年8月10日(月)〜8月13日(木) |
兵庫県 | 元町映画館 | 078-366-2636 | <上映終了> 6月15日(土)〜6月28日(金) |
兵庫県 | 豊岡劇場 | 0796-34-6256 | <上映終了> 7月12日(金)〜7月25日(木) |
兵庫県 | 宝塚 シネ・ピピア | 0797-87-3565 | <上映終了> <2022年 アンコール上映決定!!> 2022年7月22日(金)〜7月28日(木) |
岡山県 | シネマ・クレール | 086-231-0019 | <上映終了> 7月12日(金)〜7月25日(木) |
広島県 | 横川シネマ | 082-231-1001 | <上映終了> ●追加上映決定!! 6月1日(土)〜6月23日(日) 7月1日(月)〜7月14日(日) |
広島県 | シネマ尾道 | 0848-24-8222 | <上映終了> 6月29日(土)〜7月12日(金) |
山口県 | 山口情報芸術センター | 083-901-2222 | 近日公開 |
愛媛県 | シネマルナティック | 089-933-9240 | <上映終了> ●追加上映決定!! 5月24日(金)〜5月30日(木) 6月28日(金)〜7月11日(木) |
香川県 | ソレイユ | 087-861-3366 | <上映終了> 7月26日(金)〜8月8日(木) |
福岡県 | KBCシネマ1・2 | 092-751-4268 | <上映終了> ●アンコール上映決定!! 8月4日(日)〜8月16日(金) |
大分県 | シネマ5 | 097-536-4512 | <上映終了> ●アンコール上映決定!! 6月1日(土)〜6月7日(金) |
大分県 | 別府ブルーバード劇場 | 0977-21-1192 | <上映終了> 7月12日(金)〜7月25日(木) |
大分県 | 日田シネマテークリベルテ | 0973-24-7534 | <上映終了> 2020年6月13日(土)~6月19日(金) |
佐賀県 | シアターシエマ | 0952-27-5116 | <上映終了> ●上映延長決定!! 6月28日(金)〜7月25日(木) |
熊本県 | Denkikan | 096-352-2121 | <上映終了> 6月7日(金)〜6月13日(木) |
宮崎県 | 宮崎キネマ館 | 0985-28-1162 | <上映終了> ●アンコール上映決定!! 2020年2月9日(日)、2月10日(月) |
鹿児島県 | ガーデンズシネマ | 099-222-8746 | <上映終了> ●アンコール上映決定!! 12月9日(月)〜12月20日(金) |
沖縄県 | 桜坂劇場 | 098-860-9555 | <上映終了> 7月20日(土)〜8月9日(金) |
沖縄県 | 石垣市 ゆいロードシアター | 0980-83-3150 | <上映終了> 7月27日(土)〜8月16日(金) |
沖縄県 | シアタードーナツ・オキナワ | 070-5401-1072 | <上映終了> ●上映延長決定!! 9月28日(土)〜12月4日(水) |
いま、日本に暮らしている私たちにとって、どのような理由をつけても、この映画を見ないという選択肢はないだろう。見てから、見たうえで、何を語るかは自由なのだから。
戦時慰安婦という誰もが目を背け、考えたくない問題の争点がわかるスリリングな2時間。慰安婦問題の門外漢である日系英語教師が、左右両サイドの論客を訪ね、彼ら自身の言葉で彼らの嘘を暴いていく。エド・マーローがマッカーシー上院議員に好きなだけしゃべらせて彼の正体を晒したように。
慰安婦は何をやらされるか知っていたのか? 本当はどんな待遇だったのか? 米政府の調査報告の本当の内容は? 事実の検証から、事実を隠そうとする勢力の存在が浮かび上がっていく。自民党、日本会議、神社本庁……。櫻井よしこの後継者といわれた日砂恵ケネディ氏の「これで自由になれた」という言葉はあまりに重い。
味付けの濃いほうが目立つ。味付けを濃くするのがうまいのは誰か。
その濃さに国家の中枢が乗っかっているのが現在の日本だ。
「なかった」という脆弱な主張が屈強にはびこるという、矛盾した現在を映し出す。
萎縮することなく、タブーに挑戦だと構えることなく。
正面から関係者の「顔」を撮り続けることに、
これほどのチャレンジを感じるとは。
必見の映画だが、内容については書きたくない。
なるべく先入観を持たずに、真っさらな目で観てほしいからだ。
同時に、この勇気ある監督の身の安全を本気で心配してしまう。
それほど問題の核心に切り込み、火中の栗を拾っている。
それほど日本は危ない国になっている。
ユーチューブの混沌の海から長編ドキュメンタリーの大地に上陸した、敏捷で知性あふれる未知の大型生物。彼は言説のジャングルを果敢にかき分け、人びとの思想信条だけでなく人間性をもあぶり出す。
映画は論文ではない。あなたは主張する主体の表情をスクリーンで見る。
声を聴いて目の動きを確認し、一瞬の笑みや吐息に気づくこともできる。
言葉だけではない。そこに本質が現れている。
早いテンポで進む論争のスピード感に乗せられ観客は論点ごとに「なるほど」と膝を打ち、「そりゃないだろう」と違和感を持ち、引き込まれる。裁判劇のようなスリルだ。終盤には隠し玉の証人まで登場する。言葉と論理の知的ボクシングを見ているようで実に痛快。
まだ立ち位置が定まっていない人はかなり揺さぶられるだろう。だからこの映画は、しんどい。見るも自由、見ないのも自由だ。しかしこの映画を見ずとも、あなたはすでにこの「主戦場」の戦闘員なのだ。ならば、どっちの側で戦うか。「主戦場」はあなたが傍観者でいることを許さない。
主戦場。それは誰による誰のための戦場なのか?
「証言不可能性」に包まれた元慰安婦たちの、生きられた戦場の記憶の頭上を、
言葉を武器とする論客たちの空中戦が炸裂する。
本作は、そのためにしつらえられたアリーナである。
勝敗を決めるのは観客である、あなたがた一人一人である。
タイトルが凄い。戦争映画かと思ったが従軍慰安婦を取り上げた論争映画だ。日米韓の政治家、学者、ジャーナリスト、活動家、市民が次々とインタビューされる。
驚いたのはネトウヨの登場だ。彼らに初めて場が与えられた。今までの恨みもあって彼らの叫びもすさまじい。それに反対する人たちも命がけだ。監督はそれを丁寧に拾い上げディベートさせる。
映画館だけじゃもったいない。世界中の学校で上映すべきだ。